親が認知症になると「実家の売却」も「預金の解約」もできなくなる?今日からできる3つの事前対策

「実家で暮らす70代の両親。少し物忘れが増えてきたけれど、まだ元気に過ごしているから大丈夫」
そう思っていませんか?
実は、親が認知症になって判断能力が低下してしまうと、「実家を売ることも、親名義の銀行口座からお金を引き出すことも一切できなくなる」という事実をご存じでしょうか。
介護費用を捻出するために実家を売ろうとしたのに、売却できず、子どもの持ち出し(自腹)で毎月何十万円もの介護費用を払うことになった……というケースは、法律事務所の現場でも後を絶ちません。
この記事では、行政書士、法律事務所のパラリーガルとして多くの相続トラブルを見てきた筆者が、親が認知症になる前にやっておくべき「3つの事前対策」をわかりやすく解説します!
親の認知症で発生する「2つの資産凍結」とは?
親の認知症が進むと、法律上「契約行為」ができなくなります。これにより、家族であっても以下の手続きが一切できなくなってしまいます。
① 介護費用に充てたいのに「銀行口座が凍結」
親の介護費用や介護施設入居費のために「親の定期預金を解約しよう」としても、銀行の窓口で親本人の意図確認が取れなければ、口座は凍結されてしまいます。 家族だからといって、代理でお金を引き出すことは原則できません。
② 誰も住まないのに「実家が売却・解体できない」
親が施設に入り、実家が空き家になったため売却しようとしても、不動産の売買契約には本人の意思確認が必須です。 「名義人である親」の判断能力がないと売却できず、誰も住んでいない実家の固定資産税や維持費(庭木の剪定など)を子どもが払い続けなければならないという「空き家問題」に直面します。
認知症になった後だと「成年後見制度」しか選択肢がなくなる?
「認知症になってしまったら、成年後見人をつければいいのでは?」と思う方も多いかもしれません。
確かに「成年後見制度」を使えば、家庭裁判所から選ばれた後見人(弁護士や司法書士など)が代わりに手続きをしてくれます。しかし、この制度には子育て世代にとって大きな注意点があります。
- 自由に実家を売れるわけではない: 本人の居住用不動産を売却する場合、家庭裁判所の許可が必要で、必ずしも許可が下りるとは限りません。
- 家庭裁判所への報告義務: 親の財産は厳重に管理されるため、子どもの都合でお金を動かすことはできなくなります。
- 毎月の報酬が発生する: 弁護士や司法書士が後見人に選ばれると、親が亡くなるまで毎月2万〜5万円程度の報酬(親の財産から支払い)がかかり続けます。
だからこそ、「親が元気な(判断能力がある)うちに事前対策をしておくこと」が何よりも重要なのです。
今すぐできる!親が元気なうちにやっておくべき3つの事前対策
親がまだしっかりしているうちであれば、費用を抑えて柔軟な対策が可能です。
1. 「代理人カード」や「代理人指名手続き」をしておく
銀行口座の資金凍結対策として、親と一緒に銀行窓口へ行き、あらかじめ子どもを「代理人」として登録しておく方法です。日常の生活費や介護費用の引き出しがスムーズになります。
2. 「家族信託」または「任意後見契約」を検討する
- 家族信託(かぞくしんたく): 「実家の管理・売却権限」や「預金の管理権限」をあらかじめ信頼できる子どもに託しておく契約です。親が認知症になっても、子ども自身の判断で実家を売却し、そのお金を親の介護費に充てることができます。
- 任意後見契約(にんいこうけんけいやく): 元気に動けるうちに「将来認知症になったら、この子に後見人になってもらう」と公証役場で契約しておく制度です。
3. 「遺言書」を作成して将来の相続に備える
認知症が進むと、遺言書を作成することもできなくなります。実家を誰が引き継ぐのか、将来空き家になったらどうするのかを親が元気なうちに遺言書として残してもらうことが、兄弟間の揉め事を防ぐ一番の近道です。
【実例】パラリーガルが見た「何も対策していなかった家族」の末路
法律事務所で、私自身が実際に担当したご相談例です。
- ご相談内容: 「母が軽度の認知症になり施設に入りました。施設代を払うために母名義の自宅を売却したいのですが、不動産屋さんに『お母様の意思確認が取れないから契約できない』と言われてしまいました」
- 結果: すでにお母様の症状が進んでおり、家族信託も遺言書も作れない状態でした。やむを得ず家庭裁判所に「成年後見人」の選任を申立てましたが、手続き完了までに約半年の期間がかかりました。 その間、施設への入居一時金や月々の費用(毎月約20万円)はすべて子どもたちが一時的に立て替えることになり、家計を大きく圧迫してしまったのです。
まとめ:まずは「実家の片付け」を口実に親の意向を聞いてみよう
「親に突然『認知症になったらどうする?』なんて聞けない…」
そう思われる方は、まずは帰省のタイミングなどで「実家の片付け」や「最近ニュースでやってる空き家問題」を話題にしてみるのがおすすめです。
「お父さんたちが元気なうちに、もしもの時のお金の管理や実家のこと、どうしたいか教えておいてほしいな」と優しく声をかけてみましょう。
制度の選び方や「うちの場合は家族信託がいい?遺言書がいい?」といった疑問があれば、専門家に相談しましょう。
行政書士しらゆり事務所でもご相談を受け付けています。
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